『 WILLFUL番外編 ― One Day's Story ― 』

【Novel Top】

  One Day’s Story  −WILLFUL ≪番外編≫−


魔法大国カーレントディーテ。
言わずと知れた、魔法が発達した王国である
そこは割と平和で、割と民も普通に暮らせる国でもある





その日の朝も平和だった。
暖かい朝日が差し込み、鳥たちが一日の始まりを祝すかのように静かにさえずっている。
爽やかな朝を迎えていく人々の中に、その美女もいた。
彼女も人々と同様に、爽やかで静かな目覚めを迎える――



――ハズだった。



朝日特有の、眠気を少しづつ取り除いていく暖かい光が、大きめの窓から部屋を照らしている。
一人用のはずのその部屋のベッドには、何故か2人の影。
「う…うん……」
朝日に照らされて、ティミラは閉じられていた目を擦りつつ、身体に乗っていた掛け布団をどける。
「…あぁ…朝か……」
ボーっとする頭を振りながら、ベッドの側の窓を開け放つ。
窓から見える空は、なんだかいつも以上の晴々とした陽気になりそうだ。
「あぁ〜あ…もうちょっと寝てたか……」
外から顔を戻し、自分のベッドに目を向けたティミラは思わずその場で固まる。
「・…………たな??」
ティミラは一瞬で、昨日の夜を思い出す。

――おかしいな。昨日、確かにオレは一人で寝たぞ? 誰も入れなかったぞ??

だがそれでも、そこには記憶に無くも人がいた。
見慣れた銀髪、美形の部類に入るであろうその顔つき。
眠っているため閉じられているから分からないが、瞳の色も大体想像がつく。

――なぜコイツがここにいる??

彼女がそんな自問自答を繰り返していると、その人物も目が覚めたようだ。
もぞもぞと布団の中で動き顔をゆがませながら、目を擦りつつ身体を起こす。
眠たそうな瞳の色は、朝日よりも赤い色をしている。
「あぁ〜あ…もう朝なんだぁ…もうちょっとだけ寝てたかったなぁ…」
のん気にそんな事をいいつつ、横で固まっているティミラに気づき、笑顔を向ける。
「やぁ、ティミラも起きたの? いい朝だよねぇ〜…」
「………なんでココで寝てるんだ?」
固まったまま動けないティミラの質問に、ルージュは満面の笑みで
「いやぁ、夜に寝顔見にゲート使って部屋に来たんだけどさ。キミの寝顔がかわいすぎて、一緒に寝ちゃった♪」



「出てけ、おのれはああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


――ドゴギッ!!!!


ティミラの手加減抜き必殺エルボーが、ルージュの顔面に決まったのは言うまでも無かろう。





「まあああったく!! 何考えてんだ、あのド変態は!!?」
気絶したルージュを部屋の外におっぽり出し、着替えを済ませたティミラは、いつも通り朝食が用意されているであろう部屋に向かっていた。
故郷ミッドガルドの仕事に暇が出来たのと、常々シランから「遊びにきて♪」と言われていたのもあり、数日前からカーレントディーテにお泊りをしているのだ。
遊びに来た自分に、シランが大歓声を上げたのをよく覚えている。
よほど嬉しかったのか、朝食なども一緒に食べようと誘われまくった。
無論ブルーも一緒だし、問答無用でルージュもオマケ付き。
それでも久々の再会でもあったから、それはそれで彼女も楽しんでいた。

――のだが、朝っぱらからいきなりアレである。

ティミラが腹を立てるもの、無理はないと思われる。

――だが、一応でも自分の恋人を変態扱いもどうかと…(笑)

「まぁちょっと強くやり過ぎたかな……いや…アレぐらいじゃ死なないか……」
いつもどんなに強く殴っても、蹴っても、すぐに復活する『奴』を考えると、あの程度では甘かったのでは。
などと言う考えが思わず脳裏をよぎる。

――どう考えても、恋人同士とは思えない心理である。

「っち…もう少し強めにヤればよかった……」
「何をだ?」
思わず下を向いていた顔を正面に向かせる。
目の前には、気絶させた人物に似ている顔。
ルージュの双子の兄のブルーである。
だが弟とは違い、その瞳は深海のような青色である。
ついでに、雰囲気もあそこまで砕けまくっていないのも違いであろう。
彼が丁度ドアの前に立っていることから、考え事をしてるうちに朝食を食べている部屋の前に来ていたんだ、と気が付いた。
「あぁ。別になんでもないさ」
考えていた事が馬鹿らしいことに気がついて、ティミラは疲れ気味の表情で手をパタパタと振る。
その様子から「またルージュか…」と呆れたように呟いたブルーだったが、ティミラはそれをため息一つで吹き飛ばす。
「まぁいい。アイツの飯なんざ犬飯で構わんからな。入れ、シランが待ってるぞ」
案外酷い事をサラっと言ってのけ、ブルーは部屋のドアを開ける。
「おう、悪りぃ悪りぃ」
ブルーが先に部屋に入り、その後に続いてティミラもドアをくぐる。
「あ〜〜♪ おはよ、ティミラ!!」
緑髪の少女がサラダの乗った皿を手にしながら、元気良く挨拶をしてくる。
「お〜、相変わらず毎日元気だなぁ、シラン?」
口の端をニィっと吊り上げ、ティミラも軽く挨拶を済ます。
「もうちょっとで終るから、座って待っててね〜!!」
そう言ってパタパタと、忙しそうにキッチンとテーブルの行き来を始めるシラン。
いつもいる訳では無いから分からないが、少なくともティミラが泊まりに来て毎日がこうである。
だが何も言わないブルーを見ると、自分がいない私生活でも彼女はこうなのだろうと勝手に判断している。
王女らしからぬ、それでも元気な姿は、見ていて嫌味が無いサッパリとしたモノだ。
コーヒーが用意されている所から、自分の席だろうと判断したイスに腰かけ、置いてある熱めのコーヒーを飲む。
砂糖も何も入れないコーヒー特有の苦味と香りが、わずかながら寝惚け気味の頭を覚ましてくれる感じがした。


この数日間味わっている、のどかな朝の風景だった。


「さて…今日は何をするかねぇ…」
のどかな為に、結構なほどの暇を持て余しているティミラ。
今日は前日などと違い、めずらしくティミラ以外全員に予定が入っている。
朝食が終った後は、シランはリルナに捕まるため(勉強のためなのだが…)渋々だが居なくなる。
ブルーと言えば、若くしての実力者なために、他の兵士たちの指導などもあるようで、コレも中々忙しいようだ。
ルージュにいたっては、朝食を食べ終わった頃になって復活したようで――
少しだけいじけていたが、その後は仕事があるとの事で、泣く泣くティミラと別れることとなってしまっていた。
ので、現在実質ティミラは一人同然。
「まいったなぁ…ここまで暇だと、何をすればいいんだ??」
普段から割と動き回っているため、いざ暇になると何をしていいのか分からない。
意図的に『休み』と決めての暇とかではないため、目的も無く城をウロウロしてしまう。
「……あぁ…暇ってこういう感じなんだ」
意味不明なことを言いながら、とりあえず適当に城を歩き回る。
時々、すれ違う侍女さんや兵士たちと、軽い挨拶を交わす。
しばらく辺りをうろついていると、
「あん? ドアだ。…外に出るのか?」
ぼーっとしていたために、どういう経過で行き着いたのかわからないがとにかく目の前にドアがある。
このカーレントディーテ王城。
さりげに広くて、ティミラはココがどこなのか想像もつかない。
「………開けたら、遠いおとぎの国でした。なんてこたぁないよな…」
暇ボケしているのか、よく分からない言葉を吐いた自分に笑いながらティミラは静かにそのドアに近づいた。
かすかにだが、子供と思しき声が聞こえてくる。
一瞬、子供相手に何をしていいのか分からなくなり、ドアノブにかかった手が止まる。
だが、どうせ暇なのだ。
時間を持て余す方より、迷いながらも楽しんでみるか。
そう思って、止まった手に力を込め、外にドアを押し出す。

――キィ…

少しだけ軋んだ音を立て、ドアが開いた。
外に出ると、朝の太陽からの想像以上の晴天が広がっていた。
建物の中にいた目は太陽の光に打たれ、思いっきり細くなってしまう。
「うわぁ…こりゃすごい晴天だなぁ…」
手で目に日陰を作りつつ、ティミラはその晴天にしばし魅入ってしまっていた。

「あ!!! おねーちゃん、あぶない!!!」

――バシィ!

顔目掛けて飛んできたボールを、ティミラは間一髪で目元に持ってきていた手で叩き落とす。
地面に落ちたボールは、芝生の大地に転がっていく。
「誰だよ。あぶね―だろーが」
それを片手で拾い上げ、ティミラは初めて奥にいる子供たちに目を向けた。
7.8歳前後の子供たちだろう。
3人でボール遊びをしていたところ、たまたまティミラの方に飛ばしてしまったようだ。
「これ、お前らのかー!?」
ティミラの呼び声に、3人は慌てた様子でこちらに向かって駆け出して来た。
その慌てる雰囲気が理解できずに、ティミラはさらに眉をしかめる。
「あ…あの、ごめんなさい……狙ったわけじゃないんです…」
その眉をしかめた表情を『怒り』と取ってしまった子供たちがは、わずかに涙目で訴える。
「…別にそんなに怯えなくてもいいだろ? 謝れるんだからえらいじゃないか」
子供たちが何故恐がっているのか少し理解して、ティミラは呆れ顔で言う。
それでも子供たちはまだ少し、恐がっているようで――

――はぁ…

小さくため息を吐いて、ティミラは手にしていたボールで軽くリフティングを始める。
その見かけからは想像しにくい上手さに、子供たちは思わずそれに見入る。
「すごいなぁ…おねーちゃん、上手いんだね!」
子供の安心したようすを見て、ティミラは蹴っていたボールを、そのまま子供たちに蹴り返した。
「んまぁ、身体動かすのは嫌いじゃないからね」
「さっきも、ボールを叩いたのすごかったよな!!」
ティミラが怒っていないことが分かって、子供たちはだんだんとティミラに笑顔で接し始める。
「あれは…まぁ……条件反射ってやつさ」
手をヒラヒラさせながら、ティミラは乾いた笑いをする。
モンスターとの、命をかけた戦闘を繰り返していれば、あれぐらいはヘでもない。
だが、それはあえて子供に言う必要もないだろう。
「ところで…ここって城のどこに当たるんだ?」
話を逸らそうと思い、ティミラはこの広場の場所を聞き出す。
子供たちは笑顔で
「ここは城の入り口から繋がってる中庭だよ。ここはいつも自由に開放されているんだよ」
うれしそうな声色で教えてくれる。
「へぇ…中庭なんだ…」
そんなのがあったのか、としみじみ感じているティミラをよそに、子供たちはボールを持って広場に駆けて行く。
それを見たティミラは、まだ城の分からない部分でも見つけようかと、広場に背を向ける。
「まってよ〜! おねーちゃん!!」
その背に、子供たちの声が掛かる。
振り返るとその先に、自分の方に顔を向けている子供たち。
「おねーちゃんも、一緒に遊ぼうよ〜!!!」
「はぁ?」
子供のセリフが一瞬理解できずに、思わず変な声をあげてしまうティミラ。
自分なんぞ誘って、何をするつもりなのかわからない。
だがそんな、ティミラの思考を無視して子供たちは小走りに側に寄ってくる。
「おねーちゃん、めちゃくちゃボール蹴るの上手いんだもん。教えてよ!」
「教えるったって…」
「そうだよ〜! あんなに上手く蹴れるなんて羨ましい! 教えて欲しいな〜」
「そ…そんな事言われても……」
「いいじゃんよ〜…それとも、なにか用事でもあるの?」
「い、いや…何もないけどさ…」
『じゃあ遊ぼうよ〜!!!』
子供たちの問答無用の攻撃(?)に、ティミラは完敗を確信した。
それに用事が無いのは事実。
他の3人が、すでに用を済ませているとも考えにくい。

しばらく上の青空を仰いでいたティミラだったが――

「…………わぁ〜ったよ。教えてやるよ」
『本当!!??』
子供たちのハモッた声に、ティミラは静かに大きく頷く。
子供たちは顔を見合わせ、思いっきりの大声で「ヤッター!!」と叫びながら、駆け出していく。
「おねーちゃん! 早く来て!!」
「あぁ、わかったよ!」
しぶしぶでも心なし足取りを軽く、ティミラも駆け出した。





「あ、バランス崩すぞ?」
「…え? あぁああ!!?」
ティミラの忠告後、男の子の足から、無常にもボールは遠くの方に飛んでいってしまう。
「や〜い、これで7回目だぞ? あそこまで飛ばしたのは」
他の男の子の野次が、笑い声とともに発せられる。
ボールを取りに行った男の子は「うるせー!」とわめきつつ、一生懸命走っている。
「…そんな事言っても、お前等だって4回以上飛ばしてるだろ?」
『うっ!!!』
ティミラのツッコミに、野次っていた2人の男の子がうめく。
事実、回数が少ないからとは言え、上達しないのも寂しい感じである。
「だいじょうぶかー?」
ボールを取りに行った男の子を心配して、ティミラは声を荒げる。
それに男の子は手を振って答え、こちらに向かって走り出す。
「いっくぞーーー!!」
そう言って、手にしていたボールを走りながら蹴り飛ばす。
子供の力とは言え、思いっきり蹴られたボールは勢い良く飛んでいく。

その方向は――

「おいお前、当たるぞ?」
「え?」

――バゴン!

先ほど、野次を飛ばしていた男の子に、ボールは吸い込まれるように直撃。
その衝撃でか、男の子は思いっきり尻餅をついてしまった。
ティミラは「あちゃ…」といった感じで、額に手をあて、倒れた男の子の側に駆け寄る。
「お前、だいじょうぶか?」
「うん…だいじょうぶだよ〜…」
ちょっと痛そうに尻を撫でていたが、それでも立ち上がり服についた汚れを叩く。
その側に、先ほどの男の子も駆け寄り謝り始める。
それでも仲がいいのは一目瞭然。
お互いに庇いながらも、お互いを許しあっているようだ。
それを見て、ティミラも安心したように息を吐いき、側に転がってきたボールを手に取ろうと上半身を下げた時――


「あーーーー!!! 壊れてるーーーー!!??」


「どうした!?」
唐突に上がったもの凄い大声に、思わずティミラは慌てて駆け出した。
側に行くと、3人は尻餅をついた男の子の差し出された両手のひらを見て、ボーゼンとしているようだ。

目を細め、ティミラも3人の上から手を覗き込み――

「……おもちゃ?」
そんな感じがする物だったが、それは無残に壊れてしまっている。
男の子の両手の上のモノは、おそらくポケットにでもしまっていて、ボールが当たって倒れ、尻餅をついた時に下敷きにしてしまったのだろう。
「どうしよう…これ、じーちゃんに貰ったブリキの人形なのに……」
「ブリキ?」
もう一度、ブリキの人形と称されたモノに目を戻す。
確かに人形と言える顔の部分があり、手もついている。
だが、その全体はゆがみ、ネジやゼンマイの部品が飛び出てしまっている。
「どうしよう……僕らじゃあ直せないし……」
「ちょい見せてみろ」
ティミラの言葉に涙目になった男の子は、素直に手のひらのモノを渡す。
それを片手の平で広げ、ティミラは残骸を細かく観察していく。
酷い壊れ方のように見えるが、どうやら部品そのものは無事なようで。
直せない、という破損ではない。
「…これ、直してやろうか?」
「え…!? 直せるの??」
思わぬ助け舟に、男の子の表情が明るくなる。
「あぁ。ちょっと工具が必要だが、それはオレが持っている。問題ないさ」
そう言って、壊れたブリキ人形を再び男の子に渡す。
「ちょっと待ってろ。工具取ってくるからさ」
ティミラは踵を返して、ドアに向かって駆けていった。
「おねーちゃん! ありがとう!!」
男の子の言葉を背に受け、ティミラはドアを開け場内に戻る。
「さて…部屋に戻らないと……」
そこまで言って思い出す。


「・…………………………オレ、どうやってここまで来たんだっけ…」





――ドバン!!

「すまない! 遅くなっちまった…!!!」
ティミラが再び中庭に戻ってきたのは、約20分以上立ってからのことだった。
「おねーちゃん、何かあったの? 遅かったけど…」
「い…いやぁ…工具がちょっと散乱してたから、片づけして持ってきたんだよ…」
子供のツッコミに適当な言い訳をして、黒い四角い工具入れを持ち直す。
よもや迷っていた、などは言えない。
目が遠くを見ているのは、気のせいだろう。
「…あ〜、とにかくブリキ、貸してみろ」
しゃがみこんだまま、すっかりしょげてしまった様子の男の子は、静かに壊れたおもちゃを差し出した。
それを受け取り、適当に平らな地面の上に敷いた布の上に置く。
手際よく壊れた部分と、平気な部分、そしてネジなどの部品を分別していく。
男の子たちは、その様子を静かに周りから見ている。
壊れている、と言っても、バラバラに砕けたわけではない。
ネジなどが外れ、酷い分解のされ方をしているだけなので、ティミラが直すには問題なかった。
壊れた部分を解体し、飛び出たネジをもう一度、しっかりと止めなおす。
外れてしまったゼンマイは、かみ合うようにしっかりと中側にはめ込み、動きを確認する。
てきぱきと、気が付けは多少の傷は付いているものの、すっかり元通りのおもちゃ。
部品が何も残っていないのは、すべてが戻っている証拠であろう。
直ったおもちゃは、剣を持った男が、それを上下などに振ったりするブリキのようだ。
ネジを巻くと、ジジジと音をさせながら、人形が動きだす。
「すげー……元通りだよ…」
男の子は信じられない、といったようすで呟く。
「ま、オレに掛かればこんなもんさ」
工具を片付けながら、ティミラは事も無げに言いのける。
「おねーちゃん!」
子供たちの声に、ティミラは片付けていた手を止め、視線を向ける。
「直してくれて、ありがとう!!」
3人仲良く、一緒に頭を下げてお礼を言う。
そんな3人の頭を掴み
「いいよ。直ったなら、それでいいだろ?」
言いながら、顔を上げさせる。
「さ、工具片付け終わったら、続きやるか?」
笑顔で言ったティミラの言葉に、男の子たちは嬉しそうに顔を見合わせた。





「あー…疲れた……」
部屋に戻ってきたティミラは、工具を机の上にほおり、肩を揉みながらベッドに倒れ込む。
3人の男の子とは夕方に別れ、部屋に戻ってきた。
暇も潰せたし、楽しかったと言えば楽しかったが、意外に身体には疲労が溜まっていた。
「案外つかれるものなんだなー…」
あお向けになって天井を仰ぎながら、ティミラは微笑みながら呟いた。
こういう日も、たまには悪くないと思えた。
「さて…夕飯まで少し眠るか……」


――ティミラァァァ!!


遠くから、自分を呼ぶ声が聞こえた。
一瞬目を開けそうになったが、嫌になって即座にそれを止める。
だが”彼”は問答無用である。

――ガチャバン!!

「ティミラ〜〜!! やぁぁっと終ったよ〜〜!!」

――ルージュ=リヴァートが現れた。

「…あれ? 寝ちゃってるの??」
静かな足音が、自分に近づいているのが分かった。
それでも目は開けない。

――疲れているのに、これ以上振り回されてたまるか。

「…ティミラ〜? 寝てるの??」

――あぁ、寝てる。だからさっさと出て行ってくれ…

「…………………じゃあ、僕も寝ようかな♪」
手が自分の身体に触れてくる。



「だから………」

触れてきた手を、反射的に素早く掴み取り、相手に動く事を出来なくする。

「出て行け、このドアホがあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

――メリゴキ!!





この日2度目。
ティミラの手加減抜き必殺エルボーが、ルージュの顔面に決まった。





「ティミラ……痛いんですけど……」
「知るか!!! 自分の行動を振り返るんだな!!!」
「なんで…僕はキミといたいだけなのに…!!」
「限度があるだろうが!! このボケ!!」


こうして、ティミラのとある一日は過ぎていった――





――次の日の朝――

「おはよー♪ ティ・ミ・ラvv」
「・………………………出てけ」
「え?? 何か言った??」
「…出て行けええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
ティミラの渾身の叫びが、今日もカーレントディーテの城に響いた。



――当分は、退屈のない生活が出来てしまいそうな予感――
 
 
 
 
 
+ + + + +
後書き??
えぇと、1985HITを踏まれましたこぶりん様のリクエストで
「ティミラの一日」的な内容をお送りしました(笑)
本当は「一日の過ごし方」なんですが、「とある一日」のような内容になってしまって本人かなり焦ってます(滝汗)
とにかくリクエストありがとうございました!
 
 
 
【Novel Top】
Copyright (c) Chinatu:AP-ROOM All rights reserved.