『 WILLFUL 〜王女とその仲間達〜 』
WILLFUL 1−3
カーレントディーテ城下街――――
ブルーとルージュが城下街でシランを探し始めて、およそ5時間が経過していた。
確かに、魔法大国である自国が小さいというわけではない。
大国と名付くくらいである。
国民の住む城下街だって、比例して大きく広い。
だが、城下街出身の二人にとって、かつて住み慣れた街は庭と言っても過言ではない。
抜け道やら近道やら…
知り尽くしている限りの道を通って街じゅうを探し回り、最短時間でシランを見つけるつもりだった。
しかし―――
「……いない、ね……」
「……………………」
シランが行きそうな所、自分達が知っている所。
すべて当たったが、すべてがハズレ。
シランを見つけることはできなかった。
「シラン、どこにいったんだろね、ブルー……」
「…………………」
ルージュの問いに、無言で答えるブルー。
――答えになってない気がするが。
「まいったなぁ……ほんとに、どこ行っちゃったんだろ」
「……あんにゃろ。絶対に見つけてやる……」
「あはは、変な対抗心が出てきちゃうよね〜……」
「対抗心じゃない。意地だ……」
――大して変わらないじゃん……
心の中だけでブルーにツッコんで、ルージュはあたりを見回した。
目に映るのは街を行き交う人々。
新緑のように綺麗な黄緑の髪。
そして、他の何より目立つ金色の目。
それらの特徴を持つ、自分達が探している少女は見当たらない。
ルージュは大きくため息を吐いた。
――――と。
「きっと大丈夫よ。シラン様が探しに行ってくれてるんだから」
ぴく。
近くで井戸端会議をしていたおばさま達の言葉が、ブルーとルージュの耳に入る。
「でも、いくら強いからって王女様に頼むなんて……」
「しかたないじゃない。私達では探せないんだから……森には、モンスターがたくさん居るのよ?」
「そうよ、死んでしまったら元も子もないわ!」
「でも……」
なにやら深刻そうな面持ちで、会話を続けている。
話からして、シランが森に行ったのは確かだろう。
ルージュは嬉々として会議に乗り込んだ。
「おばさん! その話、詳しく聞かせて!!」
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