『 WILLFUL 〜王女とその仲間達〜

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  WILLFUL 1−4  


「一体何考えてるんだ、シランは……」
「多分、なんも考えてないと思うけど……」
「まったくアイツは……少し勝手すぎるぞ……!」
森を進むブルーとルージュ、二人の影。
街のおばさん達に聞いた話は、森に行ったきり帰ってこない子供をシランが捜しに行った、という内容だった。
確かに、街から外れた森にはモンスター達が多く存在している。
普通に生活を営む街の住人にとっては、十分な脅威である。
だから、それを聞いたシランは自ら望んで助けに向かったのだろう。

―多分、実力試しも含めて。

だがいくらシランが戦闘に自信を持っていたとしても、その実力はまだ不十分なもの。
森で逆に襲われる可能性もあった。
第一、子供をかばいつつ戦闘をこなすなどは、持ってのほか。
森の奥に行けば、それなりにモンスターも数を増やす。
「いまさらじゃない?……っと、何かいるね……」
ルージュは目を細めて周りを見渡し、ブルーは相変わらずな表情で腰の剣に手をかける。

「そうだな……1体、か」
モンスターのようだ。
「大した敵じゃないよ。僕がやる」
ルージュの言葉に、ブルーは剣にかけた手を戻し、背を向けて歩き出す。
「さて、じゃあかる〜く終わらせますかね……」
静かに目を閉じながら、右手を上げ、指先で何か文字のようなものを空中に書いていく。
その指先には、小さな光が灯っている。
しばらくその状態が続き――
「うっし……いっくよ〜!!」
指先の小さな光が、一瞬大きな輝きになり…
「ウッド・フレイヤー!!」
光は消え去り、ルージュの声に反応し、動き出したのは――

――ガササ……ザァ!!

森と表現するんだから、もちろん大量に生息している「樹木」達。
動き出したその枝先は、細く、鋭い槍のようになっていた。
「多分あっちの方にいるからよろしくぅ!!」
ルージュの指はある一点を指し、樹木達はその方向に向かっていっせいに攻撃を仕掛ける。
最初の木が、何かに突き刺さるような音。
そして…

「ギェアアァァ!!」

響いてきたのは、けたたましい悲鳴。
しかし樹木達は、そんなのお構いなしに攻撃を続ける。
「ビ〜ンゴ! やっぱモンスターだったんだね」
ルージュの指さしていた先には、木々の枝が地面から大量に生えているような感じになっている。
樹木達が攻撃した証拠。
こんなんじゃあ、誰も生きていられないと思うが……
「うん、どうもありがとうね。ご協力感謝しま〜す」
ルージュが周りを見渡しながらそう言うと、森が一瞬ざわめき、枝が静かに戻っていく。
その枝先には、血も何もついていない。
「よぉっし……あ、ブルー追いかけなきゃ」
青い法衣を翻し、ルージュは駆け出した。










―――モンスター。

元々いつ、どこから来たのか不明な存在。
「モンスター」と称されるモノは一般的には危険な者が多い。
無論、温厚な者もいるが…
ほとんどの者が人語を解さぬ、言わば凶暴な動物…といっても過言ではない。
死に至り、自身の命が尽きると、灰のように、砂のように掻き消えてしまう。
もっとも、それなりの強さを持つと、消えずに居るものもあるが……
「待ってよ〜!」
ブルーは後ろから聞こえた弟の声に振り返る。
「ちょっとはさぁ、待とうかな〜って考えとかないわけ?」
駆け寄ったルージュの言葉に、あいもかわらずな調子で
「無い。先に行くと言っただろう? 黙って行くならそれなりに処置をとるが、そうでないのなら問題外だ」
サラリと言ってのけ、また歩き出すブルー。
ルージュは「先に行くなんて言ってないじゃん」と心の中で反抗して、それに続いていく。
「そんなことより先を急いだほうがいいな。シランとガキ達が心配だ」
「そだね……でも、さぁ」
ルージュはその場で腕組しながら、話し始めた。
「よくよく考えたんだけど、ここ結構広い森だよ?」
「何をいまさら……だからなんだ?」
ブルーの言葉に、少々うなだれつつ

「……どうやって探すの?」

ブルーに顔を向け、答えを求める。
当人ブルーは「フンッ」とそっぽを向き、
「知るか。テキトーに探せば良い」

「…………………………」

―――チュンチュン……

鳥の鳴き声が静かに、小さく辺りから響いていた。
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