『 WILLFUL 〜始まりの歴史〜

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  WILLFUL 2−10  


カーレントディーテ城下町、リヴァート宅、2階の双子の部屋。
朝食を終えたシランとティミラが、彼等の部屋でくつろいでいた。
「ふ〜ん……この本が、ねぇ……」
ティミラは、机の上に広げた古びた本を見ながらぼやいた。
彼女が手にしているのは、シランが城の図書館で見つけた『創造戦争』の本。
「……それにしても、一体いつ持っていたんだ? この本」
本から目を離し、ベッドでゴロゴロしているシランに視線を向ける。
「ん〜? ルージュがティミラを迎えに行ってる間に。暇だったし、必要だと思ったから」
「まぁね。情報はこの本にしかないんだろ?」
「わかんない」
「わかんない?」
ティミラは本を手に持ち、シランの目線上に差し出して
「これを見つけたのはアンタだろ? わからないって、どういう意味なんだ?」
そう続けて、本に再び目を落とす。
「少なくとも、カーレントディーテにはこれしかないって事なんだよねぇ」
シランは身体を起こし、あぐらをかく。
「……どういう意味だ?」
「ん〜とね、城のは確かに世界でも有数の大きな図書館なんだけど、その
ほとんどが魔法書とか、聖霊とか…魔法、魔術に関する物なの」
シランはベッドのマクラを手にとり、両手で抱きしめて顔をうずめる。
「つまり、歴史に関するものは少ないってわけか…」
「そ〜ゆ〜こと」
彼女の言葉に、ティミラは目を細めて、もう一度本に目を落とした。
本はかなり古いようで、色があせている。
「一体コレの何が気になるんだ?」
「え? 何が?」
すっとぼけた、あいかわらずなシランのリアクションに苦笑しながら
「何が、じゃないよ。この内容だ。第一、この本、信憑性あるの?」
「さぁ〜……それをこれから調べに行くんじゃない!」
心底嬉しそうに、シランは笑顔を浮かべた。
「そうだったな。あとはブルーとルージュが来れば…」

――コン。

ティミラの言葉をさえぎって、窓に何か当たった音が耳に入る。
「なんだ?」
音のした窓は、表の通りが見える方とは逆の、後ろにある森を眺めれる窓。
そこを覗くと、下にはこちらを見上げる銀髪の双子。
「ルージュとブルーじゃねーか……」
「え!!?? 二人とも来たの!?」
シランがベッドから飛び降り、窓を開けて身を乗り出す。
「おぉ〜〜い!!! ふたぶが!!?」
「バッカ!! 大声出すな!!!」
思わず叫びかけたシランの口を、問答無用でティミラが塞ぐ。
塞がれた本人は、コクコクと首を縦に振る。
下にいた双子も、少しばかり焦ったようで。
ティミラが口を塞いだのを見て、安堵の息を吐いた。
「ちょっとは考えろっつーの!!」
「ご、ごめ〜ん……」
首を引っ込めて謝るシラン。
「まったく…で、もう出れる準備は出来てるんだろうな?」
「もっちろん!! おまかせあれ!」
「よっしゃ。じゃあ、とっとと下に降りてくれ」
「りょーかい!」
笑顔で敬礼をして、シランは窓から身を躍らせる。
普通の王女なら仕出かす事のないようなこんな行動も、彼女にかかればお手の物。
みごと地面に着地をする。
「やぁ! その様子だと、目覚めの良かったみたいだね」
ルージュがいつもの笑みで、笑いかける。
「もっちろんだよ!! ゆーっくり寝れたもん♪」
「お前らしい回答だな……」
ブルーの言葉に「えへへ♪」と笑うシラン。
そんな会話をしている内に、ティミラも下に到着する。
「これで、全員だね!」
シランのセリフに、3人は笑みをもらす。
シランも実に、楽しそうである。
「じゃあ、さっそく…」
「その前に!!」
行き先を考えていたシランに、ルージュが待ったをかける。
「シラン、クリス様のお墓に行ってくれない?」
「お墓? なんでまた?」
「アシュレイ様の伝言を預かってるんだよ」
「げっ……もしかして、バレてるの??」
「…らしいねぇ。さすがって感じだよ」
ルージュの様子からすると、どうやら自分の父が、旅を認めてくれたと判断したのだろう。
シランはそれ以上は何も言わずに、
「じゃあ、伝言通りにお墓に行こう!」
そう言って、森の中に足を踏み入れていった。
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